情報学的転回

情報学的転回―IT社会のゆくえ

情報学的転回―IT社会のゆくえ

以前に読んだ「ウェブ時代をどう生きるか」の内容に共感したので別の著書も読もうと思っていた。だいぶ時間はあいてしまったけど自分の考えも基本的には変わっていないので同じ感覚で読み進められた。ただこちらの方が学問的なのでちょっと重かった。
IT社会のゆくえという副題の付くこの本。IT技術だけではなく宗教観に基づく人間の心、規範のようなものも合わせて考えるということが大事だというのは同感で、つまりは技術に振り回されるのではなく、人にとって心地の良い技術社会に向かいましょうということか。どうも誤解を与えそうな文になってしまった。まとめるのは難しい。

情報学的転回とは実は、人間を機械化していく現在の流れを逆回転させることなのです。機械情報に基づく転回を拒み、生命情報に基づく転回へと変質させること − それが真の情報学の使命ではないのか。

アメリカ発のIT技術の背景には、どうしてもキリスト教に根ざした考え方が見えてきます。宗教から一番はなれたところにいるように思える科学技術の領域にも、その根底にはそこで活躍する人の考え方の基準としての宗教があります。だからこそグローバル化した世界では自国の文化や、自分の宗教というものが重要になってくる。そこに自分の軸を置いて相手を理解するということが必要になるのです。
そういった意味で、なんでも無批判に欧米と比較して持ち込もうとする、宗教のないこの国はブレが大きく、心配になるのです。
そのためには著者の研究のように、文と理の両方にまたがる学問が必要になるでしょう。

というか、そもそも文と理に分ける必要なんてないというのが私の考えですが。どんな学問にも文の要素も、理の要素も比率は異なるものの両方含まれるわけで、こういった文理を分けない研究者が増えてもらいたいものです。