「甘え」の構造

「甘え」の構造 [増補普及版]

「甘え」の構造 [増補普及版]

仕事上どうしても外国の方、特にアメリカ人に動いてもらわなければならないことがあるのでコミュニケーションに苦労をしている。正しくこちらの事情や考えを理解してもらえるようなわかりやすい伝え方を常に考えているので、そのために考え方の違いを考察することが多くなる。
著者も留学中に感じた「文化的な衝撃(cultural shock)」からアメリカ人と日本人の考え方の違いを分析するようになったというのが非常に近いように思った。
言葉は考えを表現するツールなので、それぞれの言語の差に着目することで文化の差が見えてくると思う。それは文法的な違いもそうだし、単語の違いからもわかる。辞書的な意味は同じでもニュアンスまで完全に一致して置き換えられる言葉というのはなかなかなくいつも悩むことになる。
著者は「甘え」とその心理状態と関連する一連の語が英語に存在しないことに気づき、「甘え」の心理状態を明らかにすると同時に「甘え」を知らない外国人との対比で日本人の考え方、社会構造をわかりやすく説明している。
たしかに実感として頷けることが多く、心理的な面の背景を理解できたような気がする。
著者は日本人なので日本人の「甘え」の心理を説明することのほうが得意だ。だからこの本は海外で日本を研究する学者の評価が高いのだろう。
この本は今後のコミュニケーションに役立つと思うが、できれば私はこの反対のバージョンが欲しい。
このようなすばらしい本が昭和46年に書かれ、それから40年近くたっているのにコミュニケーションはぜんぜん駄目という状況が悲しく、またもったいないと感じた。