ロボット化する子どもたち ―「学び」の認知科学

ロボット化する子どもたち―「学び」の認知科学 (認知科学のフロンティア)

ロボット化する子どもたち―「学び」の認知科学 (認知科学のフロンティア)

現在一般的な学習と、21世紀型の学習を考える一冊。
現在の学習カリキュラムというのは「教え込み型」で「正しい知識を簡単なものから複雑なものへ、ひとつひとつ系統的に積み重ねた形で与える」ものであるという。
それに対する概念として「しみこみ型」の教育という形がでてくる。これは「できて欲しいという思いをしみこませ、子どもはそれを原動力に一所懸命がんばる」というもので「良い環境を与えることに配慮し、子どもは環境から学習する」ものだという。典型的なのは日本の伝統芸能や職人の学習の仕方ということだ。
著者は、不確実な事象に満ち溢れた現実社会を生きていくには、正しい知識を細かく埋め込まれただけでは臨機応変に対応することができなくなるのではないか(それがロボット化という訳)と心配する。それに対して普通学校では教えない間違っているかもしれないこと、あいまいなことも含めて環境から学ぶ力を身につけられるように教育というものを考え直す時期に来ているのではないかという主張だ。
そこに強く共感した自分にとっては第6章「高度情報化時代の学び」が本書の肝だと思う。

21世紀型の学びのプラットフォームとしてeラーニングも取り上げられている。その中で印象に残った問題提起があった。

最後に、eラーニングを検討するときに注意しなければならないことは、検討しようとしている私たちが経験してきた「学び」のスタイルがフェイス・トゥ・フェイスのいわゆる「学校教育」であるという点である。換言すれば、私たちは対面授業を基準に据えて議論しがちであるが、それではある意味、偏った議論しかできない。生まれたときからすでに、コンピュータやインターネットが空気のような存在としてそこにあるという環境の中で育ってきた子どもたちが学ぶとき、学びの場としての「サイバースペース」は彼らにとってどのようなリアリティを持つかを検討しなければならない。それは当然のこととして、私たちのリアリティとは異なったものになる可能性がある。対面授業しか経験のない私たちにとってコンピュータやインターネットは単なる学びのための「道具」でしかないが、彼らにとってはそれ以上のもの、ひょっとするとこれまでの「学び」の常識を変えてしまうほどの意味のあるものになるかもしれない。
そのような可能性も頭の隅に置きながら、今後eラーニングについては検討を続けていかなければならないと考えている。
(第7章 「学び」の新しいパラダイム

これは気がつかなかったです。デジタルネイティブの学習環境はゼロリセットして考える必要がありそうです。