悩む力

悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

しばらく前にトップ10にランキングしていた新書。
何を悩むのか。まずは目次から。

序章 「いまを生きる」悩み
第1章 「私」とは何者か
第2章 世の中すべて「金」なのか
第3章 「知ってるつもり」じゃないか
第4章 「青春」は美しいか
第5章 「信じる者」は救われるか
第6章 何のために「働く」のか
第7章 「変わらぬ愛」はあるか
第8章 なぜ死んではいけないか
終章 老いて「最強」たれ

厳しい現代を悩みながら生きるものとしてとても考えさせられた。
大変な時代だからこそ悩むことを放棄しないで、真剣に考えることが大事だと思った。

第5章 「信じる者」は救われるか より、

 そして、かく言う私も、自分を信じるしかない、「一人一宗教」的に自分の知性を信じるしかないと思っています。
 自分でこれだと確信できるものが得られるまで悩み続ける。あるいは、それしか方法はないということを信じる。それは「不可知論だ」という人もいるでしょう。でも、中途でやめてしまったら、それこそ何も信じられなくなるのではないかと思います。
「信じるものは救われる」というのは究極的には、そういう意味なのではないでしょうか。何か超越的な存在に恃むという他力本願のことではない、と思います。

第6章 何のために「働く」のか より

 これはとても象徴的で、「人が働く」という行為のいちばん底にあるものが何なのかを教えてくれる気がします。
 それは、「社会の中で、自分の存在を認められる」ということです。同じようにその場にいても、ホームレスとしてたまたま通りかかっただけだったら、声をかけられることはなかったはずです。一生懸命働いていたからこそ、ねぎらいの声をかけられた。人がいちばん辛いのは、「自分は見捨てられている」「誰からも顧みられていない」という思いではないでしょうか。誰からも顧みられなければ、社会の中に存在していないのと同じことになってしまうのです。
 社会というのは、基本的には見知らぬ者同志が集まっている集合体であり、だから、そこで生きるためには、他者から何らかの形で仲間として承認される必要があります。そのための手段が、働くということなのです。働くことによって初めて「そこにいていい」という承認が与えられる。
 働くことを「社会に出る」と言い、働いている人のことを「社会人」と称しますが、それは、そういう意味なのです。「一人前になる」とはそういう意味なのです。

自分もしっかりと悩み続けるし、子どもにはきちんと悩み、考える人間になってもらいたい。