「食糧危機」をあおってはいけない

「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

俗説をデータに基づいてひとつひとつ否定しながら、本当の食糧事情を教えてくれる良書。
表紙のコピーは以下の通り。

BRICsの経済成長、人口爆発、生産量の限界、「買い負け」、バイオ燃料、食料自給率……
食糧危機の俗説を一網打尽!

食糧問題をシステム工学で分析した
「食料は、本当は余っている!」

だいたいにしてマスコミの取り上げるセンセーショナルな記事は、ほとんどの場合一面を示すデータから話を大きく広げたものが多い。そのような話がどのようにできあがっていくのかがよくわかる。
そして現在の農業政策がいかに問題解決にならないのかがよくわかる。
なぜそんなことが起こるのか。どうしたらいいのか。
次に引用する部分が強く印象に残りました。

日本人はシステムよりも職人好きだが
しかし日本人の思考方法は一つのものを突きつめていくことに偏り、考え方がシステム的でないところがあります。
日本人は「この道一筋何十年で、一芸を極めて」という生き方がすごく好きで、何かというと「何とか道」にしてしまう。
<中略>
反対に冷静な多元的な分析は「専門性がない」とあまり好感をもたれない。
「私はこれ一筋」という熱い言い方をする人に対して、システム的なものの見方で分析すると、「評論家」と言われて嫌われます。
「全体の中で君のやっていることはこのぐらいの重さだよ」と相対化されるのは、日本人はすごく嫌なのです。
私のシステム分析の先生は西村肇先生という、今は東大の名誉教授になった方ですが、その西村先生がそのころ大学院生だった私に、「本当に日本人は、周りとの関連で見るという思考法が不得意だよねえ」と嘆いておられたのを、今も覚えています。

そうなんだよ。なんでもっといろいろな見方を広く取り入れて、総合的に考えられないんだよと感じることって多いんです。
そういうことだったんだと納得すると同時に、自分は常に広い視野を持ち続けられるように気をつけようとおもいました。